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2016年6月 2日 (木)

帰ってきたヒトラー



本屋の棚にあったので、帯に「ヒトラーが現代にタイムスリップ」とあったので即購入。
おそらくコメディ系だろうな、と思ったら大外れ。

「1945年4月30日自殺したヒトラーが現代にタイムスリップ」ということで、文章はヒトラー目線で進んでいきます。
末期のヒトラーは支離滅裂な命令を下したり、かなり精神的に参っていたのですが、本書のヒトラーはものすごく洞察力が鋭くタイムスリップ物というより
「1935~1942年頃のヒトラーを現代ドイツに放り込んだらどうなるか?」
どいう上質なSF、または思考実験と感じました(もちろんコメディ要素はある)。
で、その結果は?
誰も彼を止めることができない、という面白い結果に。

まず、ヒトラーは死んだはずなので、突然現れたヒトラーは「そっくりな芸人さん」扱い。
もちろん本人は絶頂期を彷彿とさせる、無茶苦茶際どい移民や国境問題の演説をします。当然批判する者も現れますが「そっくりさんがそっくりなネタを披露してるだけ」ということで止めようがありません。
それでいてそのネタは(当然ですが)思いっきり人心を捉えます。
ユダヤ人問題についても真正面から受け止めます。
「私が責任者だ文句あっか」と。
ヒトラーにそっくりな芸人さんが「ユダヤ人問題の責任は自分にある」と発言したところで責任追及できるわけでもなし。だって「そっくりさん」だもの。
そしてユダヤ人問題は奇妙な意識のすれ違いから、問題にならなくなります

周囲→ユダヤ人ネタはとてもデリケートだからネタにできない
本人→ユダヤ人の陰謀は恐ろしいのだ。お笑いのネタにできるモノではないだ

かくてヒトラーは一番の難関を乗り越え、政治の世界へ・・・。

文章は可能な限りヒトラーの思考・思想をシミュレートしており、いわば土台がしっかりしているわけで、それゆに「上質なSF、または思考実験」に仕上がってます。
上下巻ですが、そんなに厚いわけでもなく気軽に読めますので、是非とも一読をお勧めします。

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» 「帰ってきたヒトラー」 [ここなつ映画レビュー]
コメディと見せかけて、如実に今のドイツにある危機感を示している。現代のドイツにタイムスリップして現れたヒトラー。荒唐無稽だし、笑ってしまうけれど、本当は笑うに笑えない。もしカリスマ的な扇動者が現れたら、現代のドイツでも又事は起こってしまうかもしれない。そんな警鐘を鳴らす一作である。ドイツだけでなく、恐らく(先進国と言われる)他の国でも可能性はある。そうだ、例えば日本でも。そういう点では両目をよく開いて観なければならない。ある意味、アドルフ・ヒトラーという分かり易い姿形をとっているだけまだマシなのかも... [続きを読む]

受信: 2016年6月22日 (水) 17時40分

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